ー 2013年4月3日

インターシャとジャカード

こんにちは。インプルーヴです。

先週末辺りからここ神戸も桜が綺麗に咲き、どこも春満開ですね~♪
FaceBook等にも、全国からの桜写真がアップされていて、それを見るだけで
十分なお花見ができますwww

FaceBookーと言えば…
このSNSの登場で、今までのMixi等を使っていた時よりも格段にWEBが生活の
真ん中に鎮座するようになって、WEB媒体として様々なものにアクセスし情報を
得ることがいつの間にか当たり前になっていることにびっくりしたりしますが、
それはプライベートだけじゃなくて事業においても同じで、当社もHPやブログに
力を入れるべくそれらに向き合う時間を少しずつでも増やしているのですが、
そうしていると本当に不思議なもので、WEBがなかった時代には全く考えられな
かったジャンルからの引き合いや相談のお話を頂く事があり、本当に面白い
世界だなーと思います。

私の様に転職経験が乏しく、ニットという専門ジャンルのカテゴリーに、好んで
ひたすら在籍している者には本来有得ない出遭いも巡りあいますし、
又、専門分野に特化しているだけに逆に一般の方からしたらどんな事が「ハテナ」
なのかを教えてもらえる場面もあり…

ー今日は、そんな中で最近聞かれた質問をひとつ。。。

それは、
「自分が描いた絵を繊細な薄いセーターにするにはどうしたらいいですか?」
です。

アパレル関係の人でなければ、もしそうでもニットスキルをお持ちじゃなけれ
ば先ずは「できる」か「できない」か?から分らないのかも知れませんね。
でも、今回訪ねてこられたのはアパレルとは全くの別ジャンルの方。。。
どうやら、どこに話を持ち掛ければ良いのかも分らなくてWEBで検索されたら
うちのHPに遭遇したとの事でした。

答えは「できます」です^^

方法は、今日のテーマの「インターシャ」か「ジャカード」かの
どちらかのテクニックを利用します。
インターシャとジャカードの大きな違いは、出来上がりの編地の厚みです。

「ジャカード」は、布帛の織物の手法にも昔からありますので言葉としては
馴染み深いかもしれませんね。
ニットでも、基本的には同じで何色かの糸を切替ながら編み込で柄を出す
方法です。

これはシンプルな市松模様を表現したジャカード柄。
1コースの中に3色の糸を入れて編みこむので、糸3本分の厚みになります。
1コース内の糸の総合番手が太くなるので、編機のゲージも比例して荒く
なっていきます。

裏はこんな感じです。
表に出ていない、残りの2本が裏側で編みこまれているので、それらが
混ざった様な見え方になります。

因みに、2色ならこんなリバーシブルなテキスタイルに編む事もできます。
※表側

これなら、裏面を生かしたデザインを考案することもできます。
今年流行の布帛のリバーみたいに。
※裏側

この様な幾何的な表現だけじゃなく、有機的な柄も勿論表現可能です。
この組織は、「スレッド」という編み方も盛り込んであるので、表面が
フラットだけじゃなく、少し凹みも作り、裏側に回っている糸を表に
覗かせることでもう1色増やした形の表現をしています。
この編地では3色しか使っていませんが、4色に見せています。

最初に図案を描く際には、これら表現に使うテクニックを想定して描き分けます。

裏側はこんな感じ。

同じ図案でも、編組織で柄の出方はこの様に変化します。
下の3枚の写真は、図案は全く同じです。

使用している糸の種類も色も全く同じですが、印象は変わりますよね。

さて、次はインターシャです。
これは、軽く20年以上昔のセーターですが、例としては一番分り易いので
資料として保管してあるのを引っ張り出してきました。

今となってはとても珍しい程にふんだんにインターシャのテクニックを
駆使したデザインで、インターシャの上に手刺繍を重ねて陰影を表現して
います。

【インターシャ】は、色が切り替わる毎に糸を裏で繋ぎ合わせる手法なので
ジャカードと違って厚みが出なくて、1コース内に使える色数も格段に
増えます。

拡大してみます。

裏を見てもらえると、ジャカードとの違いは一目瞭然です。

色が切替わる毎に繋ぎ目があるのがご理解頂けると思います。

因みに、これは風景写真からフィレンツェの「ドゥオモ」をモチーフに
絵を描き、それをゲージに合わせた図案に加工しなおし、加えて刺繍
の図案も私が起こして製品化された当時の製品です。
この頃は丁度クリッツアのリアルな柄表現の一点物っぽいニットが流行っ
ていた頃でこの時は【フィレンツェ】が企画テーマでした。

他にも【スイス】がテーマの時にはこんなな風景画セーターも作りました。

これは、糸の色だけではなく、糸自体も違うものを組合わせて編んで
あります。
例えば、パープルの橋の部分はナイロンモールを使い、橋桁の処には
モヘアを使いました。

これらは1コースの中でかなりの回数を任意に切替えるので、テクニックと
してもかなり高度ですし、商品もそれに応える価値感の高い出来栄えが
期待できます。  …勿論、その分コストもお高くなりますが…(^-^;

又、一か所ずつ手作業で切替えていく手横インターシャ機という編機を使う
ので、国産での生産は不可能です。当時も中国生産です。

1コース内の切替回数がもっと少なくて 単純な柄=アーガイル柄 等は、
クラッシックなインターシャ自動編機で編めるインターシャ柄の代表例で、
一般的にも認知度の高い柄ですが、この手のクラッシックな機械は、色の
切替が大抵1コース内で6回しか出来ません。
だからインターシャの柄の大きさは大体どこの商品でも似てくるのです。

…ですが、特殊な所ではこれも一応自動機です。 
そして18GGなので、かなり薄手のセーターを作る事ができます。

裏をよく見ると、部分的に糸を切らずに上に向かって繋がって編み上げられ
ているのが分ると思います。
糸が繋がっている所は、部分的にシングルジャカード編にする事で切替回数
を稼いでいます。

…とはいうものの、これもかなりの編時間と機械の調整を要するので安価での
製品化は難しいです。
又、国内でもこの機械を持っておられる工場も限られますので、そういう
意味でも希少性は高いと言えるかもしれません。
逆にここまでのスーパーファインゲージでの手作業のインターシャは大変
過ぎるので、自動機の方が現実的かもしれません。

柄の描き方次第でコストもかなり変わってくると思うので、工夫次第では
とても薄くてすっきりした、価値観の高いバリューな柄ニット商品を作る事
ができるかと思います。

…実は、ジャカードだけでも今日ご紹介したのは一般的にダブルジャカードと
言われるもののほんの一部。
もっと詳しく説明するなら、裏側の組織をゴム編にするか袋編にするかミラノ
編にするか…等で柄の出方も厚みも変わってきたりします。。。
本当にニットは奥が深いんですよ~♪

ーあまりマニアックになっても長くなるだけなので今日はこの辺にしておく事に
しますが、こんなマニアックな話題に興味のある方は又読みに来て下さいませ。
^^;

3 件のコメントがあります。

  1. 所 保良 さんからのコメント

    インターシャとジャガードのご説明大変良く分かりました。ありがとうございます。

    ところで、以前から聞きたかったことがあるのですが、お伺いする方がみつからずもやもやしておりましたが、先生をネットで拝見でき 失礼とは思いましたが、思い切って コメント致しました。宜しくご教示願います。

    横幅150cm  縦幅200cmの編地全体に 絵画のように仏像の絵 仏像の作者名 製作者の名字が描かれたニット布がありました。カラーは茶系と黒系に生成りの3色の糸で編んであると記憶しています。

    作成方法は、パンチカードによる 編機で作成するのでしょうか?

    昭和48年頃に作成されたものですが、作成する手間ひまがどれくらいのものか、その大変さをご教示頂けないでしょうか。

    宜しくお願い申し上げます。

    • improve-knit さんからのコメント

      所様
      コメントを寄せて下さり、有難うございます。

      私は先生と呼ばれる様な研究者や匠の技術者ではなくデザイナーなので、
      そんな私の経験則の範囲での回答になりますがお許し下さい。

      ご質問の
      「横幅150cm 縦幅200cmの編地全体に絵画のように仏像の絵 仏像の作者名
      製作者の名字が描かれたニット布がありました。カラーは茶系と黒系に生成り
      の3色の糸で編んであると記憶しています。
      作成方法は、パンチカードによる 編機で作成するのでしょうか?」
      について、

      そのニット布を実際に拝見していないので横編機で編んだものかどうか、又 何ゲージ
      位の編地か分らないのであくまで推測ですが…

      横幅150c…となると今の編機の幅では難しいかもですが、昭和48年位の前でしたら、
      昔は幅広のジャカード機なる専用機も存在していた様に記憶していますので、その様な
      横編機を使ってで編まれた可能性は高いかと思います。
      私の知る範囲では日本の島精機製のジャカード編機でも編幅200㎝程度の機種がありました。

      ただ昭和48年当時となると、フロッピーデータの時代でもなかったかと思うので、
      所様の仰る「パンチカード」…というか、テープの様なものを使っていたのではないでしょうか?

      「作成する手間暇について」…ですが、
      当時は当然今の様なCG技術が無かったはずなので、おそらく、記号で色分けした図案
      を作成し、それをテープに起こしていたのではないでしょうか。
      通常、一般的なジャカード柄でしたら大抵は一定の柄の繰り返しになりますので、
      その1リピート分を柄送りを計算しながら描けば良いのですが、ご質問の縦2Mの
      仏像の絵や文字を表現するとなると(その柄の繊細さにもよりますが)、相当な
      時間をかけて細部を吟味した図案の作成が成されたのではないかと想像します。

      ニットで絵を描く(編む)場合、普通の絵と違って1目1目の編み目の表現でカーブライン
      や表情などを表現するので、ゲージが細かい(ファインゲージ)ほど繊細な表現が
      できますが、その分ちょっとした目の取り方で、延滞の印象は大きく変わりますし
      緻密な計算が必要になります。
      丁度、方眼紙に三種類の記号を使って絵を表現するイメージですね。

      私の経験では、チータや豹といった目力の強い動物の眼の表現などは特に大変だった
      想い出があります。

      例えば、黒目の中に光を表現する為の白一色を
      1目入れるか、
      2目入れるか、
      3目入れるか…

      それも、
      横に並べるのか、
      縦に並べるのか、
      斜めに並べるのか…

      そんな些細な所で全体の印象も大きく変わってきます。

      所様がご覧になった仏像などの場合、おそらく荘厳さや独特の趣を表現するためには、

      顔の輪郭、
      影の付け方、
      目元・口元、
      ボディ全体の丸いライン取り…

      きっと何度も試行錯誤しながら描いた図案をテープに起こし、部分編みで試作するなど
      して確認・修正を繰り返しながら作られたものではないでしょうか。
      それが2Mもの大作となると、とても大変な作業だったのではないかと…

      又、例え図案が完璧に描けても、実際編機で編むと図案より全体に縦長になったり横長
      になったり…という誤差が出てきます。
      幾らゲージを取って図案を描いていてもそれだけ大きければきっとその誤差も大きかろうと…。

      今のシミュレーション技術なら予見できる事も、当時ならとても大変な手作業だったのでは?!

      …と、その製作者である先人に想いを馳せまる心持ちになります…。

      そんな拘りの積み重ねがそのままそのニット布の完成度に現れていたからこそ、
      きっと所様の記憶にも強く残るような作品になっていたのではないでしょうか。。

      何だか、書いている内に私もその仏像のニット布を一目見てみたくなりました(#^^#)

      …以上の様な内容で所様からの質問への答えになったかどうかわかりませんが、
      又、何かありましたらこちらにコメント下さいませ。
      私の知る範囲でお話できることは追記させて頂きたいと思います^^

      Improve-Knit

  2. improve-knit さんからのコメント

    所様

    先日、所様からのご質問についてこのブログとリンクしている当社FaceBookページを
    介してFBユーザーのY・D様からコメントメッセージを頂いたので
    この場を借りて以下にてご紹介させて頂きますね。

    -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-

    昭和48年の機種なら、、、月星かな、、、60cm幅身頃3枚取れる幅広ジャガード機ですかね。
    見附にまだ何台かあるかも知れない。
    インターシャー機なら三本さんにあると思う。
    縦糸挿入機なら幻の編み機カペルドーミ(ドイツの編み機)かも知れませんね。
    90年代までは日本に知る限りでは3台くらいありましたが、、、、使える職人と部品が足りない状態でしたね。
    ケンゾウ(ライカ時代)の頃良く使っていた編み機です。
    色が確か20何色入る機械だったと思う。

    -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-

    …との事です。
    いずれにしても、ご覧になったジャカードのテキスタイルは今となっては
    とても貴重な品であることは間違いないですね。

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