1枚のニットがお客様の元に届くまで
ニット姫2025年12月3日 18:22
こんにちは。ニット姫、こと工業ニットスペシャリストのひろみんです。
本日お届けするラジオトークアーカイブのテーマは、
ズバリ!『1枚のニットがお客様の元に届くまで』。
早速、この日のトーク内容を文字起こししたいと思います^^
今回も音声アーカイブをはりつけますので、
放送日に聴き逃した方は、目だけではなくお耳からでもお楽しみ下さいwhttps://note.com/embed/sounds/e16d0bc9e53205a56843c1651b512b8c
ーーーーーー 以下、トークアーカイブです ーーーーーー
みなさん、こんばんは~
今週も ここ、神戸スタジオからお耳にかかります、
アパレル界のニット姫・こと、
工業ニットスペシャリストの「ひろみん」です。
今日もお聴きいただきありがとうございます!
なんだか、急に寒くなってきましたが、
1日の気温差が激しい日もまだちらほら…
体調の調整、大変ですよね^^; みなさんは大丈夫ですか?
外出時には暖かい羽織ものとかストールとか、
一枚備えてお出かけくださいね。
かくゆう、ひろみんは… 実はまだ自宅の衣替えができてなくて(^◇^;)
早くクローゼットを冬物に入れ変えなきゃなんですが・・・
みなさんはもうお済みですか?
衣替えの時期になると、 いつも「あー、これもう何年も着てるな〜。
私、よっぽどこれ好きなんやな~」と 思うセーターが
何枚か出てくるんですが、
みなさんもそんなお気に入りのセーターってあったりしますか?
他にもお洋服あるのに、なーぜかついつい手が伸びちゃう
ヘビロテな1着…。
今日は、そんな皆さんの大切な一枚が、 どのようにして生まれるのか。
みなさんが、使い捨てではなくて大切に毎年着たくなる
お気に入りのニットたちが、
たった一本の糸から皆さんの元に届くまでの長い長い旅路について、
ニットの水先案内人?のひろみんがこっそりお教えしたいと思います~。
題して、『一枚のニットがお客様の元に届くまで』。
それでは、本日も最後までお付き合いください~
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▪️すべての始まりは「企画会議」という名の雑談から
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つくるものは違えどですね、ものづくりに携わっている方なら
みんなおんなじかと思いますが、
私たち工業ニット商品づくりもまずは『企画』から始まります。
インプルーヴは創業から約25年、一貫してニット製品の企画を
専門にしてきたチームです。
先日、弊社のブログにも『企画会議の風景』というタイトルで
少しだけ様子をアップしたのですが、
社内での企画会議は、よくある『静かで真面目な会議』とは
ちょっと違ってて~。なんか、井戸端会議?みたいな~www
『最近、街でこんな着こなしをしている人をよく見かけるよねー』とか、
『この素材、ちょっと触ってみて!すんごく気持ちいいんよ!』とか
『メチャクチャ軽い素材みつけたよ~!』とか。。。
まるで雑談のようにワイワイしながら、
みんなが自由にアイデアを持ち寄ります^^
そこから『じゃあ、このメチャクチャな軽さを活かしたら、
一日中着ていても疲れないのにおしゃれ!っていう 上下セットが
つくれれるんじゃない?』とかっていうような感じで、
アイデアの芽が吹きだしてくるわけです。
わたしたちがいつも大切にしているのは、
ただ単に「こんなん流行ってるで!」みたいに流行を追うのではなく、
…あ、もちろんトレンドというエッセンスはふんわり取入れる前提ですが、
『お客様の毎日がこの一枚で少しでも豊かになるか?』という視点です。
その次は、契約頂いているクライアントさんのブランド毎に
ほんとにたくさんのデザイン画を描き、
クライアントさんたちと一緒に吟味して、
何十種類もの工業用の糸の中から候補デザインを選び、
試作品の仕様設計書…いわゆる『設計図』にあたるものを
作成していくんですが、
この最初のステップ『企画会議』にはたっぷりと時間をかけています。
すべてはここから始まる、
いわば『設計図』づくりのための要の時間ですね。
この会議は、社外の方が主となるので、もっとちゃんと会議っぽいですw
その商品を生み出す目的や、商品を通したお客様へのベネフィットが、
実際に作る私たちはもとより、クライアントの皆さんや、
実際に店頭でお客様と接する販売スタッフみんなが同じベクトルで
商品をお客様のお手元にお届けできそうか…
そこまでしっかり、みんなで落とし込む。
これもまた、とーっても大事な時間です。
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▪️魂を吹き込む「糸選び」と「編み」の技術
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そこで吟味されて決定したデザイン達は、
その目的に合せて工業ニット生産用の『仕様設計書』(設計図)を
作成し、 時にニット用のパターンも製作します。
これらの準備と並行でおこなされるのが『命を吹き込む』工程、
糸選びと編み立てです。
ニットの品質は、大げさでなく『糸』で8割決まると私は思っています。
ここだけは、いくらAIが発達してもちょっと専門過ぎてクラウドデータ
が少ないせいか、まだまだ私たち熟練の経験と勘が重要になってきます。
ここで、ニット糸にちなんでちょっと特殊な糸のお話をすると、、、
私たちが誇る特許技術に『Cofith(コフィス)』というブランド名で
展開している特殊な銅線糸と、
それを活かした抗菌グッズの商品展開があります。
Coはコッパー=銅、 Fiはファイバー=繊維、 Thは、スレッド =Threads=糸
という3つの単語の頭文字をとった造語です。
銅イオンじゃないですよ~。生の銅です!
みなさんよくご存じの十円玉の原料を細長~~~~い糸に
した感じです。
それで作った商品はもちろん金属なので、触ったらひんやりします。
これ、元となるのは髪の毛よりも細い特殊な銅線なんですが、
そのまんまじゃ編めない…ので何か工夫がいるなーとのことで
特殊な繊維でカバーリングしたらどうか…と、
私たちのアイディアを基にして完成したオリジナルの糸です。
以前、YouTubeチャンネルでこの銅線糸を編み機にかける 動画を
公開したところ、
『金属なのにニットになるの!?』と メチャメチャ反響をいただきました。
…(で、なんで、銅線なん?! )
って、今、みなさん頭の中に「???」が浮かんでますよねwww
ひろみんにはリスナーさんのキョトンとしたお顔が見えますwww
なぜ『銅』なん?というと……
「銅」って、実はメチャメチャすごい抗菌性があるんですよ!
私がそれをおもいついたきっかけがあって…
2018年、17年ごろかな。。。ふとしたしたご縁で
0歳児からのお子さんを 預かる施設に伺ったことがあって、
それがメチャクチャ寒い季節だったんですが
職員さんがみんな半袖のポロシャツだったんですよね。
それが見るからに寒そうで~
「どうして12月に半袖なんですか?」とお尋ねしたら、
「小さいお子さんはノロウィルスとかにすぐに掛かってしまって、
お世話をしたり吐しゃ物を片づけたりする際に、
万が一 長袖の繊維の中にほんの1滴でも入っちゃったら
空気感染して 施設を一時閉鎖しないといけなくなってしまうので、
少しでもリスクを減らすためなんです」と…。
それを聞いて、付着してもすぐに菌が無力化するような
力がある洋服がつくれないのだろうか…と思っちゃったんですよね^^;
色々調べてみたら、一般的に抗菌性は高いと知られている銀よりも、
銅の方がよっぽど強力なことがわかってきて。。。
銀は、ウィルスが付着して不活化するまでに約7時間かかるんですが、
なんと、銅なら4時間足らずでほぼゼロ..! しかも1時間弱で1/3迄減ります!
すごくないですか?!
インフルエンザウィルスの実験だと、 だいたい30分位で
不活化することが立証されています。
あ、ここだけの話、これから冬になったらブーツがくさかったり、
革靴の足のニオイが気になる方は、
靴の中に10円玉を何枚か入れとくと菌を殺してくれて、
臭いが気にならなくなりますよ~(笑)お試しあれ!
で、さっきも言いましたが、これ生の銅金属なので、
いくら極細にしたからといってそのままでは編めないんです…涙
うかつに扱うと編機の針の方が負けちゃいます(/ω\)
そのまま編むには、よっぽどゆるゆるにしないと布地状にならないし、
ゆるゆるに編むと、隙間だらけでその隙間から菌が付着しちゃうし…
とうところで、編める糸に加工する糸開発が必須となり…
そしたら、そういうのを面白がってくれる糸メーカーさんが
現れてくれたおかげで、
私が色々思いつく方法を試して試行錯誤してくれた末に、
特殊なカバーリングテクニックの製法を見出して
工業編み機で編める糸の開発に辿り着きました!
こういう時にいつも思うんですが、
世のなかほんとーに「捨てる神あれば、拾う神あり」やな~って(^^♪
…とはいえ、糸が出来ても、今度現れた課題は製法の壁です。
生地状態で編んだ編地を裁断(ハサミで切って縫製する)と、
その断面から銅が肌に刺さってチクチクしちゃってとても使えない…
ということがわかってきたんですよ。
ので、最初から最後まで裁断せずにつくれる製法が必須となる…
という試行錯誤をしてるころに、
なんと、あのコロナウィルスが世界中に蔓延する事態に…
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■ニット本来の柔らかさを保ちながら、
銅が持つ高度な抗菌機能をプラスするできたら…
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ここで、私は急遽、服に活用する思考を一旦置いといて、
身の回りでよく触れるものをカバーする…という開発に切り替えました。
ドアノブカバーとかペンカバーとか、マスクのインナーシートとか。
当時最初にクローズされたホテルのバイキングで問題視された
「トングカバー」とか。。。
日常的に触れるもので、銅なのに伸び縮みすることでフィットさせられて、
ハサミで切ることなくつくれることを条件に、
メチャメチャ難解なモノづくりに取り組みました。
今はもう例外なくコロナにも短時間で不活化することは
第三者機関で立証されているんですが、
…当時も(今も?w)私たちに全然知名度がなかったことと、
ノロ、O157,サーズ、マーは完膚なきまでに封じることができる
証明は既にあったので自信はあったのですが、
コロナウィルスに効果があることはまだ認証機関で 立証できていなかった
ことや、 そういうことを調べる検査期間が手一杯で、
新商品開発に関する検査なんて後回しも激しく^^;
一般の審査申請は受け付けてもらえなくって~。 無力でした(苦笑)
…なので、商品はできあがったものの 当時あまり多くの人の不安解消の
お役には立てなかったんですが、
それでも、身近な方や立ち上げたオンラインショップを どこからか
見つけてお買い求め下さる方がいたのは嬉しかったです。
ニット本来の柔らかさを保ちながら、
銅が持つ高度な抗菌機能をプラスすることができたとしたら…
という発想から、ファッション的な見た目だけじゃない
”お客様の生活に寄り添う価値”をどう提供できるか。。。
この時の経験から、そんなことも学ばせてもらいました^^
…あ、水先案内人が大幅に脱線しちゃいましたね^^;
話を一般的なニットの服の旅物語にもどしまして・・・
そして糸が決まったら、次は『編み』。
編み機で生地を編み立てていきます。私たちはその編み方から考えます。
編み方の専門的な話までしたらキリがないので今日は端折りますが、
ここも、本当はなかなか奥深いんですよ~
さて、例えばセーターだったら、その『身頃(みごろ)』や
『袖』といったパーツを一つひとつパターン通りの形に
編み上げていくんです。
私たちの工場では、今でも熟練の職人さんが 一台一台の編み機に
貼りついて糸の張り具合や 機械の調子をミリ単位で調整しています。
この『人の目と手』が、ふっくらとした、単に機械だけでは出せない
温かみのある風合いを生み出すんです。
インプルーヴのホームページの『ものづくりへのこだわり』という
ページでも紹介していますが、
こういった、失われつつある光景は、何度見ても 私たちの誇り
といってもいいんじゃないかな~と思っています。
ここで…もうひとつ!
みなさんにとってもお役に立ちそうな面白い取り組みをされている
うちの顧問先があるので、その会社の探求のご紹介を~。
それが、 ”ミテジマ化学” 様という化学の会社があるんです。
天然由来の添加物を使って、ハムやソーセージなどに固める食品
添加物を作っている系の化学の薬品会社なんですが、
その化学の会社の新ジャンル創出プロジェクトで
「毛玉よ、さようなら!」がテーマの「次世代ウール商品の開発」
と いうのがあるんですが、
これは、ミテジマ化学様が持つコア技術である
タンパクコーティング技術をウール100%の工業ニット用糸に
転換させて、業界用では”ピリング”って言うんですが、
出毛玉が出来ないウールの糸をつくれるんじゃないか
と考えて技術開発をされているという会社からご相談を受けて、
私たちはそのアパレル商品開発部分全般の監修業をさせてもらっています。
もちろん私たちは化学のお手伝いはできないんですが、
実際に洋服にして機能するのか?の実験とか、
そのような機能がファッションにプラスしたら
お客様が喜こんでくれる洋服はどんなものか、などを
提案するブランディング業務をさせてもらっています。
ーで、今、2年目になるのですが、
ようやく「これ、ピリング起きないんじゃない?!マジか?!」
というレベルまで到達しつつ…あります!
今度、ぜひそこの方々にゲストに来ていただいて
その辺のリアルなお話をお聞きしたいなーと思っているんですが、
この技術が施されているニット製品の素材は、
世界的に高評価を受けている高級なメリノウールの中でも
特に…あ、ちょっと専門的な話をしますよ!
**19.5μ**という極細の羊の毛を
集めたエクストラ・ファイン・メリノウール100%と言う
とっても肌触りの良い糸を使って加工を試みています。
シルクのような光沢となめらかな風合いを持つ、まさに極上の素材です。
私の40年ほどのニットデザイナー経験の中でもあるあるなんですが、
ホントいい素材ほど必ず毛玉が出来るんですよ~ 悲しいことに(涙)
これ、大枚はたいて買ったな~と思って、1日着たら3日休んで…。
ブラッシングもして…なんてやってても、、起きちゃうんですよね~(-_-;)
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■そもそも…毛玉(ピリング)はなぜ起きるのか?
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なぜかというと、極細で繊維が細く長い糸ほど毛先に出ている部分が
摩擦によって絡みあってしますんです。これが毛玉の原因。
これを回避しようとすると、一般的には表面を焼く…みたいな
加工を行うんですが、そうすると折角の高級ニットのしっとりした風合いが
損なわれてパサパサした着心地になっちゃうんですよ~。
これは、私たちの中でも永遠のテーマだな~と思っていたんですが
まさか、全く異業種の化学の会社がその解決に向かうなんて、
しかも、それを私たちにに「手伝って~」って言ってくださるなんて♥
私たちも是非ともお手伝いさせてほしいなーと思って
取組みに参加させていただくことにしました。
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■ 毛玉ができにくいニット服。いよいよお披露目?!
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この、「長く愛せるニット製品」としてお届けできる
商品のデビューがもう目前なんです!
12月ごろからオンラインショップにお披露目される予定です❣
レディースとメンズ、ユニセックスの3ジャンルあって
型数は全部で8アイテムほどになるんですが、
男性用はジップアップのブルゾン、女性用には何とニットパンツ!
を考えました。とにかくピリングしないので心置きなく穿いていただける
はずなんです。
そういうところも立証になるかなーと。。。
今、巷ではジャージィ素材のパンツなどが流行っているんですが、
それをニットでちょっとオフィシャルな感じにしたててみたいなーと。
もうすぐ皆さんのお目に触れられるようになったら
又ご紹介したいと思っております!
…というわけで、 ほんとはニットのお洋服の旅路の話は続くんですが、
つづきは次回のお楽しみにしたいと思います!
チョット前半の話をしゃべりすぎました~^^;
私たちが作っているのは単なる『洋服』ではなくて、
お客様の日常に寄り添い、時には心をも温める『パートナー』のような
存在を 丹精込めて送り出したいなーという想いで、
当社スタッフ一同、関わる技術者の皆さん、 研究者さん方…
みんなで日々ものづくりと向き合っています♪
この番組への感想はもとより、 ニット姫・ひろみんへの質問、
「こんな業界の事、 ○○マニアな人の話を聞いてみたい!」とか、
今日の話に出てきた「毛玉にならないニットって、なんなん?!」
などなど・・・ なんでも構わないので、
ゆめのたね放送局のHP「おしえて!ニット姫」番組の コメント欄から、
おしえていただけると嬉しいです^^
ではまた来週、お耳にかかりましょう!
チャオ!
